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(。・-・)。φ ★:2007/06/11(月) 07:54:03 ID:???
出発の合図の音が駅に響く午前9時過ぎ。主人の小山さん(48)と一緒に電車を見送る
ことから、私の一日が始まるの。「みぁー」と発車オーライを告げて無事に出発を確認したら、
次の電車までひと休み。
私の名前は「たま」。メスの三毛猫、8歳です。人間でいうと45歳くらいね。今年1月、紀の
川市の和歌山電鉄貴志川線貴志駅の駅長になってからは、“猫の手も借りたい”くらい
忙しい日も多いのよ。
1999年4月29日に、この駅で生まれました。ママの「ミーコ」は出産の1か月ほど前から
住み着いて、駅の売店「小山商店」を経営する小山さんに世話してもらっていたらしいわ。
それにもう1匹、2000年7月に、駅前で小山さんに拾われた「ちび」がいるの。ママとちびは
助役として、私をサポートしてくれています。
1月、たまの「駅長任命式」を取材し、地元住民ら集まった人の多さに圧倒された。当のたまは、
落ち着き払い、まるでこちらを観察しているようにさえ見えたのを思い出す。
今、平日であっても、たまを見ようと訪れる人は絶えない。人気を裏付けるように、写真を
あしらった缶バッジや絵はがきなどグッズの売り上げも好調だ。
たまの駅長就任前、1日平均約700人だった貴志駅の利用客は、就任直後の1月、約17%
増加した。同線の年間利用者数も、営業初年度の06年度は約211万9000人と、営業を譲り
受ける前の05年度を約19万人上回った。07年の大型連休期間の収入は約515万円で、
前年同期比40%増。同電鉄も「地元支援といちご電車投入の相乗効果に加え、たまが大きく
貢献してくれた」とする。
とはいえ、同電鉄の経営状況は決して楽観できるものではない。06年度の決算見込みは、
総収入約3億3400万円に対し、総支出が約4億9380万円。地元自治体からの補助金
8200万円を差し引いても約7780万円の赤字だ。
「地元に支えられて初年度は比較的順調だったが、さらに利用客を増やさないと」。そんな
危機感から、同電鉄では、いちご電車を利用した各種のイベントや「おもちゃ電車」の導入など、
次々と新企画を提案。利用客へのアンケートやダイヤ改正なども繰り返している。
地元住民の存続への願いと、廃線の危機にある各地のローカル線関係者の期待。それらの
思いを乗せて、力強い“助っ人ネコ”とともに貴志川線がどんな未来を切り開くのか。楽しみに
見守りたい。
正午過ぎ。幼稚園児の元気な声が聞こえてきたわ。のんびりお昼寝したいところだけれど、
子どもたちが触っていくから、ぐっすり眠れないのよね。
ほら、また2人、電車から降りてきた。今度は新婚さんだそうよ。「いちご電車はかわいいし、
『たま』の帽子のずれ加減もたまらないですね」と群馬県の会社員尾池成さん(31)と妻(30)。
猫好きの2人は、新婚旅行のコースに、いちご電車の旅を加えてくれたんですって。関西に
とどまらない私の人気ってほんと、すごいわ。
高校生が帰ってくると、私の仕事もいよいよ終盤。あ、近くに住む県立向陽高2年、
青木さん(16)だわ。「すっかり貴志川線の顔になったけど、忙しくて疲れた様子の時は、
とても心配です」って、いつも気にかけてくれているの。地域の人たちの支えがあるから心強いわ。
さあ、私の営業終了時刻の5時も過ぎて、夕焼け空になってきました。いよいよ本日最後の
お見送り。手を振るみんなに一声「みゃあ」。ご乗車ありがとうございました。
(2007年6月10日 読売新聞) ※名前などは省略しました
ソース
http://osaka.yomiuri.co.jp/animal/20070610kn01.htm 安全な運行を見守り、乗客を迎える駅長の「たま」
http://osaka.yomiuri.co.jp/photo/kannat/KN20070610121641184L1.jpg 続きを読む »